今回のMV制作では、進め方そのものを少し変えてみました。歌詞と楽曲の分析から、アートボード、ムードボード、アニマティック(絵コンテをつないだ仮映像)、カットごとの画像生成まで、多くの工程をCodex/ChatGPTアプリに一貫して任せています。AIの提案や判断をできるだけ尊重して進めたら、どんな作品になるのか。そんな検証も兼ねた制作です。

2-stepの跳ねと、ロックの手触り
楽曲のサウンドは、UK garage rockと2-step swingを軸に組み立てました。細かく跳ねるシンコペーションのドラムとガレージ由来のパーカッションに、ざらついたギターの短い一撃、しなやかなサブベースを重ねるイメージです。タイトなビートの中に少し尖ったロックの質感を置くことで、カラスの反抗心と、誰かを守りに行く意志の両方を支えています。
ヴァースは抑制して緊張をため、サビでは一緒に歌えるような勢いへ開く。その起伏が曲の大きな柱です。映像も、前半は余白や静止を残し、サビに入ると移動方向や奥行き、カットのスケールを広げる構成にしました。音の跳ねを画面の細かな揺れに置き換えるのではなく、ためてから前へ踏み出す感覚を、玲とカラスの動きで受け止めています。
歌詞から、物語の骨格をつくる
『クロウ』の歌詞は、街で「邪魔者」と見られるカラスの視点から始まります。それでも、ガラスが割れた音や誰かの悲鳴に気づけば、嫌われている自分が助けに行く。誰かに褒められるためではなく、待っている人のもとへ向かう歌です。
その一人称の声を、映像では黒瀬玲と一羽のカラスに託しました。街から少し離れている二つの存在が、初めは別々に見え、やがて同じ異変に気づき、並んで進んでいく。歌詞を一行ずつ説明するのではなく、「見られる側」から「誰かのもとへ向かう側」へ変わる流れを、MV全体の軸にしています。
画面のルールも、先に言葉にする
キャラクター設定画に加えて、色や光、都市の密度を決めるムードボードと、カットをまたいで守る画面のルールをまとめたアートボードを用意しました。白や淡い空色の街に、玲とカラスの黒、少量のコバルトブルーを置く。赤は危機の瞬間だけに絞り、普段の画面には広い空とコンクリートの余白を残します。
最初のアートボード案は、カラスの青が強く、夜の場面が「負傷した鳥を抱く物語」にも見えてしまうため採用しませんでした。修正版では青を反射の小さな面に限定し、黒いシルエットと大きな都市の形を中心に整理しています。AIに任せるといっても、最初に出たものをそのまま使うのではなく、意図と違う読み方にならないかを確かめながら進めました。

アニマティックで、音と場面をつなぐ
歌詞と音の展開をもとに場面を組み、静止画の絵コンテを音楽に合わせてつないだアニマティックを作りました。最初の構成を見返すと、物語の流れを保ったまま視覚的な情報を足したい箇所が見つかり、カットの候補を広げて再確認しています。最終的には、39カットの土台から67枚の採用候補へと画面を増やし、音の間に映像がどう呼吸するかを見直しました。
サビでは、効果や線をただ増やすのではなく、カメラの距離や移動方向、画面の奥行きを大きくして解放感をつくる方針です。ガラスの破断を合図に玲が走り出し、カラスが少し先を飛ぶ。救助の瞬間は大げさに見せ切らず、手と光の変化に託しました。

誰にも気づかれない働きと、開いていく空
助けたあと、物語は喝采へ向かいません。二番では、ごみ置き場がきれいなのはカラスのおかげだと、少しむきになって訴えます。街を支える働きが当たり前のように見過ごされることも、この歌の苦さです。映像では、散らかった場所が整ったあとの静けさを置き、玲とカラスが称賛を待たずに次の気配へ向けていきます。
終盤ではもう一度異変を察知し、夜の青黒い街から、朝の広い空へ。最後に残るのは「認めてもらえた」という結末ではなく、それでも誰かのもとへ行く姿です。青と白を基調にした画面が少しずつ開き、黒いシルエットが空へ抜けていくところを、このMVの余韻にしました。
AIにゆだねたから、見えた流れ
今回試したかったのは、制作の各段階で自分が細かく先回りして決めるのではなく、AIが読み取り、組み立てた案を尊重していくと、どんな映像の流れが生まれるのかを見ることでした。もちろん、生成されたものを確認し、意図とずれたところを見直す工程はあります。それでも、歌詞の解釈から画面の約束、絵コンテ、カット画像までを一続きで扱ったことで、ひとつの判断が次の工程へ受け渡されていく感覚がありました。
いつもの自分なら選ばなかった案が、次の場面につながることもありました。今回はそこがおもしろかったです。次につくるときも、どこまでAIの案で進めるか、また試してみたいと思います。
UK garage / rock / garage-houseクロウ嫌われ者のカラスが誰かを助けに行く物語。MVでは、歌詞の読み取りから絵コンテやカット画像までAIの提案を試しました。曲のページを開く →最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
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