かるぴんmusic
← ノート

地下の賭場を、ライブに変える。『地下上々』と『NO MORE CHAINS』制作ノート

地下の賭場が囚人たちのライブへ変わる『地下上々』。動画の使える部分を選び、手の左右や階段、最後のドアを見直し、英語版まで制作しました。

有線マイクを持って歌う黒髪の主人公と赤い地下賭場

地下の賭場で、一人が歌い始める。その声に周りの囚人たちが応え、最後にはみんなで地上へ向かう。『地下上々』では、そんな流れを一曲の中に通してみました。

着想は、もちろん、あの伝説的な漫画です。

地下で働き、賭場へ戻される閉ざされた世界。そこから自分の曲では、賭場がライブに変わり、一人の声に周りが応えて、みんなで地上へ向かう流れを描いてみました。

赤い照明、灰色の作業着、オレンジ色のズボン。主人公には名前の代わりに「137」という番号が付いています。繰り返す日々から抜け出し、自分の名前を取り戻す物語です。

人物と世界観は、キャラクターシートとアートボードを基準にしました。地下の冷たい色、賭場の赤、出口の先にある朝の光。一曲の中で通る場所を見渡しながら、カットを作っています。

地下の階層、賭場、階段、地上の朝をまとめたアートボード
地下から地上までの場所と光を見渡すためのアートボード。

今回は画像を作るところから、動画の選び直し、字幕、縦横の画面への調整、そして英語版『NO MORE CHAINS』まで進めました。途中では、見直すたびに気になるところが出てきました。

かるぴんmusicのYouTubeで公開した日本語版MV。地下の賭場から、仲間と地上へ向かう物語です。YouTubeで見る ↗

歌う主人公の周りにも、歌を届けたい

最初のサビは、地下の賭場がライブへ変わる場面です。主人公は低いカード卓の上に立ち、マイクを持って歌う。黒い服の女性ディーラーが客席を煽り、囚人たちが声を返す。賭けのために集まっていた人たちが、一緒に叫び始めます。

ただ、最初の並びでは主人公や女性を正面から見たカットが多く、似た画が続いていました。一枚ずつ見ると勢いがあっても、つなげると変化が少ない。

そこで、歌う主人公のアップから、叫ぶ囚人たち、踏み込む足元、上の階から応える人たちへと視点を移しました。途中には、その熱狂から取り残されるボスも入れています。

特に最初のサビの入りは、ボーカルが歌っているアップにしたかったところです。歌が強く入る瞬間に、その声を出している顔を見せる。そのあとで周りの反応へ広げるように、画像と動画を差し替えました。

低い赤い卓の主人公が囚人の客席へマイクを向け、女性が声を張る
歌手から客席へ。囚人たちの応答が見えるように組み直した場面。

サビの勢いを作るには、歌手と客席の間を行き来することも必要でした。

五秒の動画から、使う一秒を選ぶ

動画素材が揃った段階では、116本のファイルがありました。多くは五秒ほどの動画です。Codexと一緒に素材を並べ、元の画像との対応や、途中で絵が変わっていないかを確認しました。同じ動画を重ねてダウンロードしていたものや、古い画像から作ったものも混ざっていました。

動きにも、いろいろな問題がありました。マイクを渡すはずが、自分の方へ戻してしまう。外したはずの番号札が、胸に戻る。途中から顔の雰囲気が変わる。鍵に意図しない光が出る。五秒の中に、使えるところと使いにくいところが同居していました。

今回は一カットを一〜三秒くらいにして、変化の多い映像にしたいと思っていました。そのため、動画の長さをそのまま使うより、動きが自然に見える短い部分を選んでいます。崩れ始める前で切ったり、別の素材へ替えたり、必要な表情だけを切り取ったりしました。

一方で、同じ歩行を無理に二つへ分けていたところは、ひと続きに戻しました。カットを増やしても、同じ動きの途中で切っているだけなら、新しい情報は増えません。

原画を並べた段階では105カットだった構成が、動画を選び直した日本語版では89カットになりました。使うところを選び、重なる役割を整理した結果です。

鎖はどちらの手にあるのか

今回、何度も確認することになったのが、主人公の手でした。拘束具は主人公の左手首。鍵とマイクは右手。

設定としては単純でも、正面、背面、斜めからのカットが混ざると、画面上の左右につられて見間違えます。こちらが間違いだと思った画像を、もう一度見直す場面もありました。肩から腕、手首、指へとつながりを追い、胸の番号や人物の向きも合わせて確認しています。

左右反転だけで済ませにくい画像もありました。手の位置を直すと「137」の文字まで反転したり、ボスとの立ち位置や移動方向が変わったりするからです。

そういうカットは全景を使わず、表情の寄りへ替えることもありました。ただし、寄るほど元画像の細かさは足りなくなります。違和感を外せても、画質には別の課題が残る。その両方を見ながら選びました。

主人公以外も、途中で変わっていた

ライブの群衆には、動画の途中で背が伸びたように見える女性がいました。最初は前景のディーラーや、画面全体の熱量に目が向いていました。時間を少し進めて見比べると、背景の人物の比率が変わっていることが気になります。

この場面では、女性ディーラーの表情と煽る動作を中心に切り取り、問題の人物が入らない範囲へ調整しました。群衆全体を見せる面白さは減りますが、このカットではディーラーの声が客席へ届くことを優先しました。周りの熱量は、隣のカットで見せるようにしています。

時間差の比較と採用した切り取り。クリックすると拡大できます。

AIで作った動画は、最初の一枚がよくても、途中まで同じ姿が続くとは限りません。主役の顔だけでなく、その後ろで動く人たちにも目を向ける必要がありました。

上へ向かう階段と、最後のドア

後半は、警報の鳴る地下から地上へ逃げる場面です。ここでも、階段を上っているはずなのに、体の向きや足の置き方から下っているように見えるカットがありました。

背中が見えていれば上りに見える、というわけでもありません。階段の段差、足の接地、次の踊り場がどこにあるか。その関係を見直しました。上る背中が続きすぎるところには、老人を助ける仲間や、追ってくる警備員、誰もいない吹き抜けを挟んでいます。

主人公と仲間が明るい上方へ階段を上がる背面
階段の向きと人の動きがつながるように見直した上昇の場面。

最後のドアは、特に順番が難しかったところです。閉じた扉へ近づく。鍵を使う。開いた先に光が見える。地上へ出る。この流れの途中で、鍵を使う前から扉の隙間が見えたり、開閉を繰り返しているようになったりしました。

新しい画像と動画化プロンプトも用意しましたが、一本の動画で全部の動作が自然につながるとは限りません。使える手元の短い部分と、開いたあとの画をつなぎ、前後の状態が伝わるように組み直しています。

開いた出口の前に立つ主人公と地上の朝日
鍵の手元のあとに置く出口。解錠から地上へ向かう流れを整理した。

地上に出てからも、番号札を外す、床に残った「137」を見る、空を見上げる、歩き出す、という順番を整理しました。ここは主人公が何を置いていくのかが伝わってほしい場面です。

字幕の大きさにも、何度も戻る

歌詞字幕は、これまでのMVと同じように、白い文字を画面へ直接置く形にしました。背景の帯や枠、影は付けず、歌詞以外の説明も入れていません。ただ、最初の調整では文字が大きすぎました。

過去の動画やスクリーンショットと見比べ、太さ、位置、大きさを何度か変更しています。最終的には32を基準にしました。この数字も、書き出す画面の解像度と一緒に考える必要がありました。正方形、横長、縦長では、文字の入り方も、人物と重なる位置も変わります。

映像の切り取りも同じです。縦画面にすると二人の顔をうまく残せないカットがあり、横画面では顔が上端で切れてしまうところがありました。場面ごとに、顔、鍵、足元など、何を見せたいのかを決め直しています。

CapCutから書き出した映像に音楽と字幕を合わせるところまで進めましたが、画面のサイズを変える作業には、思っていた以上に細かな判断がありました。

英語版も、音楽に合わせ直す

日本語版の作業を進めたあと、英語版『NO MORE CHAINS』も制作しました。日本語版『地下上々』と英語版は、現在、それぞれ別のYouTubeアカウントで公開しています。英語版はCarpin Musicの名前で届けています。

英語版はCarpin Musicの英語YouTubeアカウントで公開しています。実際の英語歌唱に合わせて再編集したMVです。YouTubeで見る ↗

日本語と英語の音源は、全体の長さがかなり近いものでした。でも、歌い出しやサビの入り、掛け声、間奏の位置まで同じではありません。英語の歌唱を基準に、カットのタイミングを合わせ直しました。日本語版にはなかった間には、無人の階段と、上へ抜ける縦穴のカットを入れています。

英語版は91カット。正方形、横長、縦長それぞれに、全編と最初のサビを用意しました。サムネイルや紹介文も、英語版の曲名に合わせています。

歌詞の原案と実際の歌唱を照らし合わせる作業も進めています。機械の認識結果だけで決めず、確認が必要なところは残しました。また、映像の時間を合わせることと、英語の発音に口の動きが完全に合うことは別なので、歌唱アップの見え方も引き続き確認するところです。

日本語と英語、それぞれのYouTubeで公開しました

日本語版『地下上々』も、英語版『NO MORE CHAINS』も、YouTubeで公開しました。英語版は、日本語版とは別のアカウントで公開しています。

作品の置き方は、Sunoには日本語版と英語版の両方、TikTokには日本語版、YouTubeは言語ごとに別のアカウント、という形にしています。今回の二つのYouTube公開は、その形で作品を届けていくための一歩になりました。

同じ映像の世界を使っていても、歌う言葉が変わると、声の入り方やサビまでの呼吸も変わります。英語版では実際の歌唱に合わせてカットを組み直し、字幕やサムネイル、紹介文も英語で用意しました。

歌う主人公とNO MORE CHAINS、CARPIN MUSICの文字を配置した英語横サムネ
英語版『NO MORE CHAINS』のサムネイル。日本語版とは別のYouTubeアカウントで公開しています。

今回の制作は、別の言葉で歌うところから、その作品を届ける場所まで考える機会にもなりました。同じ地下の物語を、日本語版と英語版、それぞれの歌で公開できたことも、今回の制作で広がったところです。

音源と歌詞は、日本語版の楽曲ページと英語版の楽曲ページにまとめています。

今回の作業では、作った画像や動画に何度も戻りました。気に入ったカットでも、前後につなぐと違う意味に見えることがありました。それでも、主人公の歌に囚人たちが応え、みんなで上へ向かう流れは残したいと思って進めています。

まだ確認したいところはありますが、今回見つけた問題や直し方も制作記録にまとめました。次の作品を作るときに、同じところで迷い続けないように。

一人の声が周りへ広がり、最後には空の下へ出ていく。『地下上々』で試したかったその流れを、日本語と英語、二つの歌で公開しました。どちらかの言葉から、この地下の物語に出会ってもらえたらうれしいです。

朝の都市へ向かって歩く主人公と仲間たちの背中
最後はみんなで地上へ。地下から続いてきた物語の行き先。
industrial rock / rap地下上々賭場で一日分を失う地下から、仲間と地上へ。もう番号じゃないと歌う164 BPMのロックとラップ。MVでは一人の歌が囚人たちのライブへ広がります。曲のページを開く →

最後まで読んでくれて、ありがとうございます。

← ノートへ戻る