ふと、あるアニメを思い出したことから、ケーキ屋さんとお客さんの話を考えました。店では毎日会うけれど、その関係から先へはなかなか進めない。そんな気持ちを、宮崎弁の方言ソングにしてみたのが『ショートケーキ』です。
すれ違いや勘違いを、映像でもさりげなく描きたいと思っていました。けれど、歌に合う一枚の絵を作ることと、一曲を通して自然につながる映像を作ることは、思っていた以上に違いました。
サビで、本当にケーキを渡す
最初の制作では、全編のカットを考えるより先に、画像を増やしたり、画面の比率を変えたりする作業へ進んでしまいました。手元にはすでに、店の街並みや人物の雰囲気を描いたアートボードとキャラクターシートがありました。その良さをもっとよく見て、曲全体の流れから考えるべきだったと思います。
特に外したくなかったのが、最初のサビです。「君に渡したショートケーキ」なら、そこで本当にショートケーキを渡したい。二人が近くにいるだけの画では足りません。小さな白い箱が彼の手から彼女の手へ移り、そのあとに彼の言えなかった気持ちと彼女の笑顔が続くよう、カットの順番を組み直しました。

後半のサビでは、誕生日のホールケーキを渡します。同じ動作を繰り返しながら、今度は彼が「誰のためか」を聞けない。小箱と大箱の違いが、この二つの場面の違いにもなりました。
一枚ではよく見えても、前後につなぐと変だった
絵を並べてみると、細かな違和感がいくつも見つかりました。卵を割る手が体につながって見えない。ガラスに不要な線が入り、店の中を分断してしまう。厨房から見た入口が、別の店のような形になる。女性が髪を結んでいたはずなのに、次のカットでは下ろしている。
箱も難しい小道具でした。手元のアップではよく見えても、次に人物が持つと急に大きくなる。ケーキを箱に入れる順序と、リボンを結ぶ順序が前後して見える。渡して持ち帰ったはずの小箱が、店に残っているように見えるカットもありました。
そのたびに一枚だけを直すのではなく、前後の場面へ戻りました。店の入口、ショーケース、作業台の位置。誰が箱を持っていて、中には何が入っているか。画面のきれいさに目を奪われると見落とすことを、何度も確かめました。

二人が会っていない時間も描く
もう一つ気になったのは、似た距離から二人を見るカットが続くことでした。海の見える坂道で向かい合う画も、引きと寄りを続けるだけでは、同じ場面を繰り返しているように感じます。
そこで、人のいない店や坂道を挟みました。間奏には、主人公が制服を脱いで街を歩き、雨の日に部屋で休み、夏の公園で一人座る短い場面も加えています。彼女にも、店へ来る時間とは別に大学や友人との時間があります。二人が会っていない間も、それぞれの日常は続いているはずです。

街は、宮崎らしい光や海への坂を手がかりにした架空の場所にしました。有名な景色をそのまま見せるより、この店が本当にありそうだと感じられる背景にしたかったです。
彼の想像と、彼女の時間
誕生日のケーキを頼まれた彼は、誰と食べるのか聞けないまま、誰かが彼女の隣にいる姿を想像します。映像では、彼女が友人たちと過ごす場面を短く入れました。彼の想像だけで彼女の気持ちを決めてしまわないためでもあります。

大きなどんでん返しにしたいわけではありません。聞けなかった一言から、頭の中で話が少し先へ進んでしまう。その身近な勘違いが、見ている人にそっと伝わればうれしいです。
制作途中には、原曲の158.4秒に静止画をつないだアニマティクスを作り、1:1を基準に16:9と9:16でも構図を確認しました。曲の最初から最後まで並べて初めて、似たカットの連続や、物の位置が変わる違和感に気づけたところもあります。
白い箱は、ケーキを渡すためのものです。同時に、言えなかった言葉をしまう箱にも見える。その余韻を残したくて、何度も絵と順番を見直しました。ケーキを渡すことはできても、その先の言葉はなかなか出てこない。そんな小さなもどかしさが、歌にも映像にも残っていたらと思います。
industrial pop / melancholic / intimateショートケーキケーキ店でいつもの注文を待つ人の、言えない恋。誕生日のホールケーキを箱に入れる場面まで、甘さと苦さが並んでいます。曲のページを開く →最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
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