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ちょっとすれた黒猫と、東京を歩く。『東京猫』MV制作ノート

Steamで見かけた『Stray』の印象から、ダークなラップと東京を歩く黒猫へ。曲と映像を最初から一緒に考え、最近の制作でも特に手戻りが少なかった一作です。

朝焼けの浅草を背に、瓦屋根の上を歩く黒猫

今回は、ちょっとダークなラップを作りたいな、というところから考え始めました。

都会を舞台にして、人ではなく動物を主人公にしたらどうだろう。そこで浮かんだのが、都内をくるくる渡り歩いている、ちょっとすれた黒猫です。街のことをよく知っていて、人間が忙しくしていても、自分は自分のペースで暮らしている。そんな猫なら、この曲に合うかもしれないと思いました。

『東京猫』は、曲と映像の両方を、最初からイメージしながら作った作品です。

まだ遊んでいないゲームが、印象に残っていた

着想のひとつに、以前Steamで見かけたゲーム『Stray』があります。猫を操作して、サイバーシティを歩くアドベンチャーゲームです。

実は、私はまだプレイしたことがありません。それでも、「猫になって街を歩く」というコンセプトが面白くて、印象に残っていました。

今回、都会と動物を組み合わせて考えたときに、その記憶がつながりました。東京の屋根や路地を、自分の庭のように渡り歩く猫。『Stray』で気になっていた猫の視点を、自分の曲と東京の景色へつなげてみたのが、この作品です。

黒猫は、少しクールで、街に慣れた感じにしたかったんです。魚の匂いで目を覚まし、日向があればそこで休む。首輪も予定もないけれど、寝床なら何個かある。歌詞を考えるときにも、その猫がどう暮らしているかを一緒に思い描きました。

「人間は急ぐ、俺は寝る」という言葉には、この猫の性格がよく出ていると思います。ダークなラップの中に、そんな少しとぼけた余裕を持たせたかった。曲を作りながら、屋根を歩く姿や、商店街、夜のネオンも考えていました。

浅草の屋根から、始発前の渋谷まで

舞台は、浅草、上野、谷中、高円寺、中野、新宿、渋谷。朝焼けの屋根から昼の路地へ、夕方の商店街から雨宿り、夜のネオン、始発前の街へと移っていきます。

キャラクターシートで黒猫の姿を、アートボードで街ごとの光や空気を整理し、シーンボードから細かなカットへ広げました。魚屋や店先、ほかの猫との出会いも加えて、行く先々に暮らしの気配を置いています。

浅草、上野、谷中、高円寺、中野、新宿、渋谷の街並みと、時間帯や猫の通り道をまとめたアートボード
朝の屋根、夕方の商店街、雨宿り、夜のネオン。街ごとの空気と、猫が使う道を考えた資料です。

最初のシーンボードは16場面。そこから街の引き、猫の表情、足元、人とのやりとりを分けて、全編は77カットになりました。基本の目安は1カット1〜3秒です。

同じカットを使い回さず、近い構図や似た動きが続くところは組み替える。歌詞に街の名前が出る位置に、その街の映像が来るようにする。黒猫を追いながら、東京の景色も少しずつ変わっていく構成にしました。

今回は、映像の制作がとても楽だった

作ってみていちばん印象に残ったのは、最近作った映像の中でも、編集や手戻りが特に少なかったことです。今回の映像制作は、とても楽でした。

屋根を歩いたり、路地を飛び移ったり、丸くなって眠ったり。猫の動きって、AIがよく学習しているのかな、と感じるくらい、今回は動きのある映像を作りやすかったんです。

もちろん、見せ方を調整した箇所はあります。通行人の足の向き、屋根のある場所と雨の関係、魚に顔を近づけすぎている場面などは見直しました。使う区間を変えたり、別のカットに替えたり、拡大率や画面の位置を調整したりしています。

ひとつ覚えているのが、路地を飛び越えるカットです。いったん着地後の部分を使う形にしたのですが、やっぱり飛んでいる場面のほうがよかった気がして、戻しました。「路地から路地へ」という歌詞のところで、黒猫が宙を渡る。その猫らしい動きは残しておきたいと思いました。

住宅の間の細い路地を、木の庇に向かって飛び移る黒猫
着地後だけの区間から、宙を渡る区間へ。『路地から路地へ』の動きを残すための選び直しです。

細かなところを整えながら、気持ちよく進められた。その実感が残っています。猫を主人公にしたことで、こんなふうに制作が進むのか、という発見もありました。

日本語と英語、それぞれの猫のペースで

字幕は一行にまとめ、縁取りを外しました。全編は1:1と16:9、ショート用には最初のサビを約20秒にまとめた9:16版を用意しています。縦版では正方形の映像を中央に置き、上下を黒背景にして、字幕は下の余白へ配置しました。

英語版のタイトルは「Tokyo Neko」。既存の英語音源と、その録音で使われた英語詞をもとに、同じ長さの中で映像のタイミングを調整しています。日英どちらの版でも、黒猫と東京の一日をたどれる形にしました。

音源と歌詞は、日本語版の楽曲ページと英語版の楽曲ページにまとめています。

Steamで見かけて、面白いなと思っていた猫のゲーム。その記憶が、ダークなラップを作りたい気分とつながって、東京を歩く黒猫になりました。

人間は急ぐ。俺は寝る。

ちょっとすれているけれど、自分の居場所はよく知っている。この黒猫と一緒に、屋根や路地の向こうの東京を歩いてもらえたらうれしいです。

Industrial / Japanese experimental rap東京ネコ朝は浅草、昼は谷中、夜は渋谷。首輪も予定もない猫が、屋根と路地を自分の道にするラップ。人間が急ぐ街で、日向と寝床を見つけます。曲のページを開く →

最後まで読んでくれて、ありがとうございます。

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